いたい中耳炎(急性中耳炎)
いたい中耳炎は、急性中耳炎と言い、耳の部屋に膿がたまる病気です。
耳の痛み、耳を気にする仕草、発熱、耳だれ、不機嫌などの症状を起こします。
風邪などが原因で、耳の奥の部屋(中耳)に菌やウイルスが入ることで起こります。
治療は、症状をやわらげる薬、抗菌薬、鼓膜切開などで行います。
いたい中耳炎とは
そもそも中耳炎とは、鼓膜の奥にある中耳という部屋に液体がたまることを言います。
液体がたまる中耳炎には、急性中耳炎と滲出性中耳炎があります。
急性中耳炎:中耳に膿がたまっている
滲出性中耳炎:中耳に水がたまっている
いたい中耳炎とは、急性中耳炎のことを行っていることが多いです。
中耳炎では感染した水が溜まっているため、痛みを生じます。
水が貯まる中耳炎では痛みは生じませんが、聞こえが悪くなったり、長引くことで鼓膜が変形したりします。
いたい中耳炎について
中耳炎の多くは、鼻風邪や副鼻腔炎など鼻の感染が原因で起こります。鼻の奥と中耳(耳の奥の部屋)は、管でつながっています(耳管)。
鼻風邪で鼻水が増えると、その管を通ってバイキンが中耳に入り込み感染することで、いたい中耳炎(急性中耳炎)を起こします。
菌の種類には、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリスというバイキンが原因となることが多いです。
インフルエンザ菌は、皆さんの知っているインフルエンザウイルスとは異なるものです。
肺炎球菌ワクチンが広まってから、小さなお子さんの中耳炎は激減したと言われています。肺炎球菌は中耳炎だけでなく、頭の中の感染症である髄膜炎の原因となる菌の代表です。後遺症を残す可能性のある感染症であり、ワクチン接種はとても大切です。
いたい中耳炎の症状
「耳が痛い」「発熱」「耳だれ」が3大症状です。
耳だれについては、鼓膜に穴があかないと生じないので、耳だれの症状ないことのほうが多いです。
痛みを訴えられない、小さなお子さんですと「耳をいじる、気にする」「不機嫌」など普段と様子が違うことがあります。また、聞こえが悪くなることもあります。
中耳炎が進行すると、「耳が立ち上がったり」、「耳の後ろが赤く腫れる」ことがあります。起こった場合にはすぐに病院を受診することを勧めます。
いたい中耳炎の検査
・鼓膜をみる
鼓膜をみる検査で中耳炎かどうかを判断できます。
鼓膜が赤いか、腫れているか、中耳に膿が溜まっているか、耳だれが出ているかなどを確認します。
検査には、耳鏡を耳にいれて、顕微鏡やWelch Allyn®と言った鼓膜を拡大してみる機械を使って、鼓膜を確認します。
・鼓膜の圧を測る検査(ティンパノメトリー)や重症の場合は中耳CTの検査を行い、総合的に判断する場合もあります。
・菌を確認する
耳だれがある場合や鼓膜切開し膿を出した場合には、膿を検査に出すことによって、原因菌を確認することが出来ます。
また、いたい中耳炎の原因の多くは鼻の感染症が原因となります。鼻水の中にいる菌が中耳炎の原因の場合が多く、鼻水の検査を行うことも大切とされています。
細菌は菌の種類によって、効く抗生物質が異なります。Aという菌によく効く抗生物質もあれば、Bという菌によく効く抗生物質があるといった形です。
いたい中耳炎の治療
急性中耳炎のガイドラインでは、症状や鼓膜の所見で重症度を評価することを勧めています。
・痛み止めや風邪の症状をおさえる
軽度の中耳炎の場合には、3日間程度抗菌薬は使わずに経過観察を勧められています。
軽症の場合には、抗生物質を使わなくても改善する事が多いためです。
痛みや鼻の症状などがあれば、症状を抑える薬のみで経過を見る場合があります。
※なぜ抗生物質を使わないのか知りたい方はよくある質問へ
・抗生物質(抗菌薬)
中等度以上の中耳炎に対しては抗生物質を使用します。
一番使用される抗菌薬はアモキシシリンという薬です。(商品名:サワシリン)
中耳炎の原因として多い肺炎球菌を中心に、中耳炎の原因菌によく効くためです。
当院では、初回から多い量(高用量)での投与を行っています。中途半端な量で使用することは、効果が少なくなるだけでなく、抗生物質が効かなくなる菌(耐性菌)をつくる原因となるためです。
過去の急性中耳炎ガイドラインでは通常量を推奨されていましたが、最新の中耳炎ガイドラインでは軽症や初回から多い量を推奨されています。
効果がなかった場合には、菌の検査もとに抗生物質の変更などを行います。
・鼓膜切開
重症な中耳炎や、良くならない中耳炎では鼓膜切開で膿を出す治療をします。
にきびを想像してください。潰れて膿が出ると、急に良くなります。
鼓膜に1-2mmの穴を開けて、膿を出します。小さなお子さんの治癒能力は高いので、小さな穴は多くの場合はすぐに閉じてしまいます。
万が一穴が空いたままになってしまっても、大きくなったあとに手術で閉じることもできます。重症な中耳炎を放置すると、もどらない難聴や顔面神経麻痺などを起こすこともあるため、適切な治療が大切です。
・鼓膜チューブ
繰り返す急性中耳炎を反復性中耳炎といいます。
6ヶ月に3回以上、12ヶ月に4回以上急性中耳炎を起こす場合は鼓膜チューブ挿入を検討します。
鼓膜チューブとは鼓膜に穴の空いたチューブを挿入することで、中耳というお部屋に空気が入るため中耳炎を起こしにくくなります。中耳炎を起こしたとしても、チューブから膿が出るため治りやすくなります。
よくある質問
Q:はじめから抗生物質をつかわない事があるのはなぜ?
A:抗生物質は、何度も使うことで菌がその薬に慣れてしまい、効かなくなってしまうことがあります(耐性菌)。
抗生物質が必要な感染症にかかった場合に、耐性菌のせいで抗生物質が効かなくなる場合があります。
抗生物質にも数に限りがあるので、次々と変えていてはいつかは限界がきてしまいます。
抗生物質をコロコロと変えながら、多くの薬になれてしまった菌が体に住み着いている場合には、通常の治療では良くならない可能性があります。
耐性菌をつくらないためには、①必要なときに使う、②決められた期間・回数でしっかり飲む、③医師側が少ない量で処方しないことが大切です。
Q:なぜ鼓膜を切開して膿を出す必要があるの?
A:抗生物質は血液によって運ばれるのですが、膿の中に血管はありません。
そのため、膿の量が多いと、抗生物質がなかなか効きません。中耳炎に限らず、体の中に膿ができる病気で、たくさんの膿が貯まってしまった場合には、膿を出す治療が基本になります。