いたくない中耳炎(滲出性中耳炎)
中耳炎には『いたくない中耳炎』もあります。
耳の奥の部屋(中耳)に水がたまる中耳炎(滲出性中耳炎)では痛みがでません。
鼻水が多いとかかりやすく、お子さんではアデノイドが大きいと痛くない中耳炎になることがあります。
貯まった水を出しやすくする薬や鼻の治療を行います。
長引く場合は手術で鼓膜にチューブをいれることもあります。
いたくない中耳炎とは
中耳炎というと、一般の方は『いたい中耳炎』を思い浮かべると思います。
鼓膜の奥にある中耳という部屋に液体がたまることを中耳炎といいます。
液体がたまる中耳炎には、急性中耳炎と滲出性中耳炎があります。
急性中耳炎:中耳に『膿』がたまっている
滲出性中耳炎:中耳に『水』がたまっている
水が貯まる滲出性中耳炎では、基本的に痛みはありません。
水がたまっていることで、聞こえが悪くなることが主な症状です。
滲出性中耳炎は、お子さんの場合には無症状のこともあります。そのため放置されてしまうことも多いのですが、長い間中耳炎の症状が続くと、鼓膜の形が変化してしまうことがあります。聞こえが悪くなったり、「真珠腫性中耳炎」といった耳の骨を溶かしてしまうような「悪質なゴミ」がたまることもあり、注意が必要です。
いたくない中耳炎の原因
耳の奥の部屋(中耳)に水が貯まる原因は、鼻に原因があることが多いです。
中耳は耳管という管で鼻の奥(上咽頭:のどの一番上)とつながっています。つばを飲むと耳抜きができるのは、そのためです。
そのため鼻の環境が悪くなるような、鼻風邪や鼻炎などがあると、中耳炎を起こしやすくなります。
滲出性中耳炎のお子さんの70-80%が鼻副鼻腔炎、24-89%がアレルギー性鼻炎を合併していると言われています。
お子さんのが中耳炎を起こしやすいのは、この『耳管』が十分に発達していないためです。(短く、角度がついていない)
また、小さいお子さんだと耳管の入口の近くにある『アデノイド』が大きく、耳管を塞いでしまい、中耳炎になることもあります。
大人の場合には、上咽頭に『ガン』ができることによって、耳管がふさがり、いたくない中耳炎を起こすことがあるため、『いたくない中耳炎』を起こした場合には、上咽頭の確認が必要です。
いたくない中耳炎の症状
聞こえの症状が多いです。
「聞こえにくい」「聞こえない」「耳が詰まった感じがする」「耳鳴りがする」「耳がぽこぽこなる」などの症状があります。
いたくない中耳炎の検査
・鼓膜をみる
鼓膜をみる検査で中耳炎かどうかを判断できます。
中耳に水が貯まっているか、鼓膜の形が変化していないか、真珠腫がないかなどを確認します。
検査には、耳鏡を耳にいれて、顕微鏡やWelch Allyn®と言った鼓膜を拡大してみる機械を使って、鼓膜を確認します。
・鼓膜の圧を測る検査(ティンパノメトリー)
鼓膜の圧を測ることで中耳に水が溜まっているかを確認することが出来ます。
鼓膜からは見えない場所に水が溜まっている場合など、ティンパノメトリー検査を行うことで水が貯まっているかを確認することが出来ます。
検査で正常だと、真ん中に山のような波形がでるのですが、滲出性中耳炎では、山の位置がズレてしまったり、山が出ないなどで確認します。
→詳しくは『ティンパノメトリー検査』
・聴力検査
水が溜まっている場合には、伝音難聴という通り道の難聴を起こすため、聞こえの症状がある場合には聴力検査を行うことがあります。
また、鼓膜チューブを入れる必要があるかの判断にも使用します。
・中耳CT
中耳は広く、鼓膜からのぞける範囲は限られています。
鼓膜の形が変化しており、鼓膜の確認だけでは中耳の様子が確認できない場合には、CTで中耳の様子を確認することがあります。中耳の発育などをみるのも得意な検査です。
・鼻やのどを見る検査
鼻の中を診ることで、中耳炎の原因となるような鼻炎や鼻風邪がないかを確認します。
また、場合によっては内視鏡で鼻の奥を確認し、鼻の中の様子やアデノイドの大きさや上咽頭の確認を行うこともあります。
いたくない中耳炎の治療
発症してから3ヶ月間は、薬による治療を行います。
貯まった液体が出しやすくするような薬(ムコダイン、ムコソルバン、クラリスロマイシン)などを使用します。
加えて、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎等がある場合には、鼻の治療も行います。
クラリスロマイシンは抗生物質ですが、菌を倒すために使うのではありません。クラリスロマイシンには、副鼻腔や中耳の機能を改善するような作用があります。使用する場合には、通常量より少量で3ヶ月を限度に使用します。
鼻炎の治療では、ステロイドの点鼻薬や抗ヒスタミンという薬を使用します。
・局所治療
耳鼻科外来:吸引機で鼻水を吸うことで、鼻の状態をよくすることで、滲出性中耳炎の改善を期待します。
ご自宅でできること:風船を鼻でふくらませる自己通気という治療があります。ガイドラインではご自宅で1日3回以上行うことが推奨されています。
具体的には、オトベントという器具を使い行います。
アマゾンや楽天で『オトベント』としらべると出てきますので、そちらでも購入することが出来ます。
・鼓膜チューブ
3ヶ月つづく滲出性中耳炎の場合には鼓膜にチューブをいれて、水を出す治療を行うことがあります。
しかし、3ヶ月つづいたから必ず行うわけではなく、以下の3つがある場合に行います。
①鼓膜の変化がある場合
②聞こえが悪くなる場合(良い方で30dB以下)
③生活に支障がある場合
・鼓膜切開
一時的な改善には効果がありますが、長期的なコントロールには向かないとされています。
よくある質問
Q:鼓膜チューブをいれたら、どのくらい通院する必要がありますか?
A:長くとも4-6ヶ月に一度は耳鼻科を受診することが勧められています。
当院では1-3ヶ月毎に鼻の状態を含めて、観察することをおすすめしています。
Q:鼓膜チューブはどのくらいの期間いれる必要があるの?
A:中耳炎の状態にもよりますが、安定していればチューブを入れている期間は2年程度入れていることが多いです。10ヶ月をすぎると自然と抜けてしまうことも多いですが、抜けたあとは耳鼻科で取る必要があります。
あまり長く入れてしまうと、鼓膜が閉じなくなる場合があります。