メニエール病
メニエール病は、聞こえの症状(難聴、耳鳴り、耳閉感など)を伴う、めまいを繰り返す病気です。
特徴として、難聴は低音域を中心に起り、ストレスが多い方や几帳面・神経質な方に起こりやすいとされます。
主な検査は、聴力検査で低音域の聴力の障害がないか、めまいの検査として目の動きを見る検査で眼振を確認していきます。
主な治療は、イソバイドという苦いシロップを服用することが大切で、長期間のコントロールとしては水分摂取や有酸素運動が有効とされています
メニエール病の症状
メニエール病の症状には以下のような症状があります。
- めまいとともに、片側の耳の調子が悪い
- 耳の調子の悪さは様々で、耳鳴りがする、聞こえが悪い、耳が詰まった感じがするなど
- めまいも様々で、回転性のものから、ふらつき、ふわふわした感じなど
- めまいを何度も繰り返してしまう
- めまいの発作はきっかけなく持続時間は10分〜数時間
- めまいの発作の時期(数日〜数週)と、比較的安定している時期に分けられる
以上のような症状がある場合は、メニエール病の可能性があるため、耳鼻科受診をおすすめいたします。
メニエール病の特徴
メニエール病は、耳の奥(内耳)にある聞こえの器官(蝸牛)と平衡感覚の器官(前庭)の中に満たされた水が多くなることで生じるとされております。
10万人あたり40人程度の患者様がいるとされています。
原因は現時点では特定できておりませんが、女性に多く、性格は几帳面で神経質、頑張り屋さんに多いとされております。発作はストレスや気圧の変動が原因となり引き起こされやすいとされています。
聞こえの症状はほとんどが片側だけで起こりますが、10-20%程度で両方の耳で症状が出る方がいます。聞こえの発作だけの蝸牛型メニエールや、めまいの発作だけの前庭型メニエールという非典型的なメニエールの形もあります。
メニエール病の診断
メニエール病の診断の項目を簡単に説明いたします
症状
- めまい発作を反復し、きっかけなしに起こり、10分〜数時間続く
- めまいと共に、聞こえの症状が起こる
- めまい・耳以外の神経症状がない(麻痺や感覚障害など)
検査
- 聴力の変動がある
- めまい特有の目の動き(眼振)が確認できる
- めまい・聞こえ以外の神経症状がない(麻痺や感覚障害など)
- メニエール病に似た難聴とめまいを起こす病気が除外する
- MRIで耳の奥(内耳)に水腫を認める
以上の項目に当てはまる場合に診断をつけることができます。
以下がメニエール病で行われる検査です
- 聴力検査
①難聴の重症度:どのくらい音の大きさが聞こえていないかの難聴の重症度を音の高さごとに検査します
②難聴の種類:2種類の音の種類の検査をすることで、通り道の難聴なのか、神経の難聴なのか、または二つが混ざった難聴なのかを区別することができます。
- 眼振の検査
耳からくるめまいの場合特有の目の動きをします。片方に一気に動いて、ゆっくり戻るといった目の動きです。
眼振は一点を見てしまうと弱くなってしまうため、特殊なグラス(フレンツェルメガネ)をつけて行っています。
目の動きを見る検査ですので、辛くても目を開けていただいていた方が、スムーズに検査を行うことができます。
- MRI検査
造影剤使ったMRI検査で、メニエール病で見られる内リンパ水腫を確認する検査です。
検査の進め方に工夫が必要のため、通常大きい病院で行われます。
- その他耳の検査
そのほかの検査として、蝸電図検査、グリセロール検査、フロセミド検査などがあります。
メニエール病の治療
- 生活の改善
メニエール病はストレスや疲労、睡眠不足が深く関わっているとされています。またストレス解消方法として、適度な有酸素運動によってめまい発作・難聴が抑えられたとの報告があります。また、1日2L程度の水分を摂取する水分摂取療法なども有効とされております。ストレスをできるだけ回避し、水分を摂取しながら、有酸素運動を続け、発作が起こりにくくする生活を送ることも治療になります。
- 薬剤治療
めまいに対応するために、めまいを抑える薬(抗めまい薬:炭酸水素ナトリウム、時フェニドール、ベタヒスチン、アデノシン三リン酸)や気持ち悪さを改善する薬(制吐薬:メトプラミド、ドンペリドン)などを使用します。難聴に対してステロイド加療(※)を行う場合があります。
また、発作を抑えるため、イソバイド(イソソルビド)を使用することがあります。苦く飲みづらいお薬ですが、炭酸水などで飲むと飲みやすいという意見もあります。当院では、ガイドラインに合わせ、症状に応じて徐々に減らしながら、長い場合半年程度続けます。
- 中耳加圧療法
難治性のめまい発作に対しての治療です。耳の中に機械で圧をかけることで、発作の軽減を期待します。当院より機械を貸し出し、ご自宅や職場で毎日3分2回耳に当てて使用します。(保険適応の治療です)一方で、難聴や耳鳴りなどの耳の症状には残念ながら効果が期待できないとされております。
- 内リンパ嚢開放術、選択的前提機能破壊術(ゲンタマイシン鼓室内投与、前庭神経切断術)
難治性で保存的加療(体に傷をつけない治療)では改善しない場合に行う治療ですが、行われることは多くはありません。手術をしている病院も少なく、専門施設への紹介が必要になります。前者は長期間の経過では再発してしまう可能性がある、後者は治療による合併症などの可能性があります。
※ステロイド治療は副作用が出ることがあるため、重症で高容量のステロイドが必要な場合や高齢または既往の多い患者様は入院加療をお勧めすることもあります。